【決定版!】相続した不動産の名義変更をする前に知っておきたい5つのこと【相続登記】
【1】相続にともなう不動産の名義変更をしないで放っておくとどうなるの? 罰則はあるの?
不動産を相続したんだけど、すごく大変だししばらく放っておいても大丈夫かな?
相続登記を放置しても国からの罰則はないんだけど、デメリットが大きいからなるべく早くすませてしまうことをお勧めするよ。
【解説】
相続が発生して不動産の所有者が変わったのに不動産名義の変更をしなくても国から罰せられることはありません。この点、期限がある相続税とは異なります。
では不動産の名義変更としての相続登記をしないで放っておくとどのようなメリットとデメリットがあるでしょうか?
不動産の名義変更(相続登記)を先延ばしにするメリット
不動産の名義変更をしないで放置しておくメリットはほとんど皆無ですが、あるとすれば相続登記のための費用支払いを先延ばしにできるということでしょう。本当に当座のお金がないのであればちょっとだけ先延ばしにするこは仕方のない選択であることもあるかもしれません。しかしながら相続登記は期限は決まっていないものの、いずれは必ずやらなければならないものなので(そうでなければ売却などの処分ができません)あくまでも先延ばしに過ぎません。
不動産の名義変更(相続登記)を先延ばしにするデメリット
次に不動産の名義変更を先延ばしにするデメリットを考えてみましょう。
1)最も大きなデメリットは、登記をしない限り、第三者に対して自分が不動産の所有者であることを主張できないということです。
これを法律的に表現すると「登記が第三者対抗要件である」と言います。
相続人からしてみれば、自分が相続したのだから自分が所有者で当然だと思われているかもしれませんが、他人はそうは考えてくれません。
なぜなら、生前に不動産は誰かに売却済みでそもそも相続財産ではないかもしれませんし、亡くなった方が遺言書で相続人以外の誰かに贈与したかもしれないからです。
また遺産分割協議があった場合には、相続人のうちの誰か1人のみが所有者になったかもしれません。このように相続登記がなされない限り、第三者はあなたが本当に相続したのか確認がとれないのです。
相続登記をしない限り自分が所有者であることを他人に主張できないので、相続発生後直ちに名義変更することが通常です。
2)不動産名義変更を先延ばしにする次のデメリットは不動産を勝手に売却されてしまう危険があることです。皆様は「地面師」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
地面師とは、所有者になりすまして不動産を第三者に対して売却しその利益を自分のふところに入れてしまう人達のことを言います。
地面師は主に登記がなされず放置されている土地や建物を狙います。なぜなら本当の所有者が不動産登記簿謄本を確認するまで犯罪が発覚しないからです。
不動産の名義変更をしないで放置しておくと犯罪のターゲットにされてしまう可能性もゼロではありません。
このようなデメリットを考えて、罰則はないものの、すみやかに相続登記をされる方がほとんどです。ただし相続放棄をお考えの方は相続登記をする前によく専門家に相談してください。
【2】遺言があったら必ずその通りに不動産名義変更をしなければならないの?
遺言書には誰がどの財産を相続するか具体的に書かれていたんだけど、相続人は誰もそれを望んでいないんだよね。
そういう場合は相続人全員が合意すれば遺言書にかかれた以外のやり方で遺産を分割できるよ。でも遺言執行者がいる場合は気をつけてね。
【解説】
亡くなられた方が遺言を遺された場合は、原則として亡くなった方の意思を尊重し、遺言が優先されます。
しかしながら、相続人の全員が合意した場合には、遺産分割協議によって、遺言書で指定された方法とは別の分け方で相続することもできます。
ただし遺言で遺言執行者が選任されている場合には遺言執行者の同意が必要となり、相続人だけでは決められないこともあります。
【3】遺産分割協議は自分たちだけでもできる?
遺産分割協議は自分たちだけでやってよいのかな?
もちろんだよ。相続税が発生する場合は、相続税専門の税理士に相談するとずいぶん節税できるケースがあるから協議の前に相談することをお勧めするよ。
【解説】
遺産分割協議は亡くなった方の残された財産をどのように分配するかを相続人全員で決定することですので、もちろん相続人の皆様でやっていただくことができます。
しかしながら相続税が発生するだけの遺産がある場合には、相続を専門とする税理士にご相談されたほうが良いです。
これまでにも相続税対策はなされてきたかと思いますが、実はどの遺産を誰が相続するかによって、相続税が数百万円単位で節税できることもあります。
このプランニングは数次相続といって、今回の相続だけでなく、次に発生するであろう相続までを見据える必要がありますので、なかなか素人には難しいです。
【4】不動産の名義変更は所有権以外にも必要なの?
不動産の名義変更について調べていると所有権のことしか出てこないんだけど、ほかの権利についても目配りが必要ですか?
そうだね。借りた土地のうえに自宅を建てることもけっこうあるし、所有権以外の権利を相続していることもあるよ。
【解説】
不動産に関係する権利は所有権だけでなく、地上権、地役権、賃借権、抵当権、根抵当権など様々です。
不動産登記簿をご覧になると「甲区」と「乙区」に分かれていると思います。この「甲区」に記載されている権利関係が所有権に関するものです。一方「乙区」には所有権以外の権利が記載されています。
亡くなった方が所有権のみを有していたとは限りませんので気をつけましょう。
もし亡くなった方が抵当権を有していた場合、相続により抵当権者が変更した旨を登記する必要があります。乙区が関係している時には司法書士にご依頼いただいた方が良いでしょう。
【5】不動産の名義変更(相続登記)にはどれくらいのお金がかかるの?
不動産の名義変更をするにはどれくらいお金がかかるのかな?
一番大きな費用は税金だね。これは土地の評価額に比例するんだよ。
【解説】
不動産の名義変更としての相続登記には、登録免許税という登記の際の税金と、添付書類を収集する実費、それに司法書士に依頼される場合は司法書士報酬がかかります。
①登録免許税
名義変更する権利によって登録免許税は異なりますが、所有権の場合は、不動産評価額の1000分の4(0.4%)です。
不動産評価額は固定資産評価証明書に記載されています。
②添付書類取得の実費
添付書類の1通当たりの価格は条例によって決められているため市区町村役場によって若干の前後があるものがあります。
国から取得する添付書面は全国一律同じ値段です。
概ね、以下の価格を参考にしてください。(2018年1月現在の東京のある市区町村の例)
・戸籍謄本 1通 450円
・除籍謄本 1通 750円
・改製原戸籍謄本 750円
・住民票 1通 300円
・戸籍の附票 1通 300円
・固定資産評価証明書 1通 400円
・不動産登記事項証明書 600円 ※請求方法により異なります。
③司法書士報酬
純粋に登記申請のみをお願いするのか、登記に必要な添付書類の作成もお願いするのかで報酬は異なります。
完全に添付書類が揃っており、その点のコンサルティングが不要な場合には、1件3万円から5万円程度で請け負ってくれるところが多いのではないでしょうか。